SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第47回「フェチ」

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公開日:2025/5/27

 突然ですが何フェチですか?
 このご時世、いきなりこんな質問をしようもんなら、ハラスメントで訴えられちゃうか、あア困った。セクハラ、モラハラ、パワハラ。ハラスメントも多様性の時代だからみんながみんなで生きやすい世の中にしていかなきゃいけないからね。誰もがハッピーで、どこみてもクリーン、コンプライアンス最重視で超最高。
 ってね。本当に。コンプラとか、多様性とか、もう、本当に。みなまで言いませんけど。
 まアきっとそんなことは度外視しても、この質問はきっと駄目なんだろう。でもさ、思うんだけど、誰が訊くかってのがここらへんの話で暗になってる肝のところだよね。この人から言われたら嫌だけど、この人ならまアいいか、なんてことはあるよね。線引きガバガバ。だからと言って私なら大丈夫と思ってるわけでは断じてないので、質問は取り消して、自分の話だけすることにします。

 フェティシズムってのは良く言えば個性で、良く言わなくていいならちょい歪み。真っ当に思えるフェチもあれば、一風変わったフェチもある。その人を象徴しやすいものでもあるので、訊ねてみるのは案外面白い。ただ、当たり障りのないもので核心部をはぐらかしたりも出来るし、私って変わってるんですよね的な嘘個性のお面にすることも可能なので、他人のフェチの本当のところはわからなかったりする。表沙汰にしにくいコアに臆して、無意識的に自分自身を偽っているパターンもあると思うから、フェティシズムは奥が深いんだよ、多分。知らんけど。
 真実でも虚偽でも、はたまた勘違いであっても。まま信じても、欺かれても、見抜けても。とりあえずおもしろコンテンツであることに間違いはないと思うのです。
 あ、申し遅れました。とりあえず自分はオフショルが好きです。オフショルダーね。あとはヘソだしルック(古くない)。あとは破れてるジーパン。ちなみにあれよ、膝のところが破けてるやつじゃなくて最近の、お前一体どんな転び方したらそこ破けんだよ、みたいなジーパンね。
 以前この話を友人にしたら、「要は肌が出てりゃなんでもいいんでしょ」と雑に括られて一蹴された。「いやバカ、フェチってのは趣で、もっともっと味わい深いものだから」って反論しようとしたんだけど、めっちゃ図星だということにうっかり気が付いてしまったし、「違くて、重要なのは布で」とかも喉元まで出かかったのだが、もはやこの布至上主義的発想は逆に浅い気がした私は仕方なく口を噤んだ。肩が出てるやつと、お腹が出てるやつと、足が出てるやつが好きです。それでいいです。はい。
 男ってのは単純だなア、と勝手に世の男どもをレップして思うに至り、それはそれでって思っていたのだがしかし、私はもっと面白い人間のはずだ、と諦めきれない自分もいた。でっち上げのフェイクフェチはかなり寒いから、真髄に根を張ってるそれらを探すべく、日常に溢れるドキドキとワクワクに気を払いながら毎日を過ごした。

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。2025年4月に結成20周年を迎え、SUPER BEAVER 自主企画「現場至上主義 2025」を4月5日、6日にさいたまスーパーアリーナで行い、さらに、6月20日、21日に自身最大規模となるZOZOマリンスタジアムにてライブを行うことが決定。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中